関節リウマチ・痛風
関節リウマチ・痛風
関節リウマチとは、本来は体を守るために働く免疫系に異常が起こり、正常な細胞などを攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。関節リウマチは以前は完治の難しい疾患でしたが、新しい薬や治療法の登場によりその治療は劇的に進歩しています。
早期の診断と抗リウマチ薬を中心とした適切な治療によって、疾患の活動性をしっかり抑えることが可能となりました。その結果、関節の炎症がほとんどない状態(寛解)をめざせるようになっています。日本では約70〜90万人の患者さんがいると推測それており、男性よりも女性の方が罹患率が高いと言われています。
関節に気になる症状がありましたら、お早めにご相談ください。
関節リウマチは、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。遺伝的要因のほか、タバコ・歯周病・肥満・腸内環境の乱れ・ウイルス感染・ストレス・アスベストなど後天的な環境因子も発症リスクを高めるといわれています。ご家族に関節リウマチの方がいる場合は特に注意して、禁煙や歯科の早期治療・適正な体重管理などに努めましょう。
関節リウマチの症状は関節に限られた局所症状と、だるさ・微熱などの全身症状に分けられます。
よく知られている症状が関節の痛みで、現れやすいのは手足の指の関節や手首・足首です。指先から数えて2番目の第2関節や指の付け根、手首、足首の関節が柔らかく紡錘(ぼうすい)状に赤く腫れたり、痛んだりすることが多くあります。
肘、肩、膝などに同様の症状がみられることもあります。はじめは軽い痛みであっても、進行するにつれて段々と腫れや痛みが強くなり、関節が脱臼・変形し、動かなくなったり特有の関節変形が起きたりします。
だるさや微熱、貧血、食欲不振、体重減少といった全身症状が見られることもあります。また、目や口腔内に乾燥をきたすシェーグレン症候群などの他の自己免疫疾患を合併するケースもしばしばあります。
関節リウマチは放置してしまうと徐々に関節が破壊され、日常生活に支障が出てきます。半年以上痛みのある状態が続くと骨が溶けて変形が始まると考えられていますので、痛みを感じたらなるべく早く受診していただき適切な治療を開始することをお勧めします。
関節リウマチは完全に予防することは難しいですが、発症の引き金や症状を悪化させる環境因子を避けるような生活習慣を心がけましょう。
健康的な食生活は発症を予防するためだけでなく、治療を効果的に進めるためにも必要不可欠です。
栄養をバランスよく摂ることで肥満や腸内環境を改善し、関節リウマチが進行しにくい体質への改善が期待できます。また新鮮な野菜や果物・オリーブオイルや魚の脂・ヨーグルトなどの食べ物が炎症や痛み、こわばりの軽減を助けるという調査結果もあります。
関節リウマチは免疫系に異常が生じ、そのバランスが崩れて起こる疾患です。関節リウマチによる関節炎や全身症状を改善するための治療は免疫を高めるのではなく、免疫を抑えてバランスを整える治療が中心になります。
薬物治療では、発症早期から免疫異常を改善する「抗リウマチ薬」を開始し、必要に応じて痛み・炎症を軽減する鎮痛薬(非ステロイド抗炎症薬)やステロイド(副腎皮質ステロイド)を使用します。
免疫抑制作用を有する抗リウマチ薬で、診療ガイドラインでも関節リウマチの診断とともに、まずはメトトレキサートの使用を考慮することが推奨されています。年齢,腎機能,肺合併症などを考慮し、副作用に気を付けながら継続していきます。疾患活動性が高い場合やMTXで効果不十分の場合には、抗TNF製剤、抗IL-6受容体抗体などの生物学的製剤やJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬を使用することで、疾患の活動性をしっかり抑えることができます。
これらの抗リウマチ薬が登場したことによって、高い治療効果が期待できるようになり、関節の炎症がほとんどない寛解をめざすことが可能になっています。
筋肉の衰えや動きの悪くなった関節の可動域を改善するリハビリテーション療法も、必要に応じて行われます。また、治療の効果が早く現れるようにするための運動療法も有効と考えられています。
関節の破壊や変形が進行してしまった場合に行う手術も進歩しています。人工関節に置き換える手術や腱の再建手術によって痛みが軽減し、歩くことが可能になるなど、QOL(生活の質)の向上が期待できます。
症状が強いときは安静にして、関節を保護することが重要です。症状が落ち着いてきたら、適度な運動やリハビリテーションを行い、筋力や関節の動きを維持しましょう。感染症には常に注意が必要となります。喫煙や歯周病は治療効果にも影響するため、禁煙し歯周病はしっかり治療しましょう。
関節リウマチは一生付き合っていく病気です。当院は通いやすさと親しみやすさを兼ね備えたクリニックをめざし、リウマチ・膠原病の専門診療を行っています。関節リウマチをはじめとする膠原病の症状が疑われる場合は、お気軽にご相談ください。
痛風は、突発的に関節が腫れて激痛を引き起こす病気です。足の母趾が有名ですが、どの関節にも起こる可能性があります。この痛みは発作的であることから「痛風発作」と呼ばれており、「風にあたっただけでも痛い」と例えられるほど激烈です。1つの関節に起こる特徴があり、2つ以上の関節に同時に発症することは稀です。
痛風は現代医療においては、有効な薬も開発されており、正しい治療を受ければ、これまで通りの生活を送ることができます。しかし放置していると、関節の激痛が繰り返し起こり、発作を起こすたびに病態が悪化します。悪化すると体の至るところに結節(肉芽腫)ができたり、腎臓に悪影響を及ぼしたりするため注意が必要です。痛風にみられる特徴的な症状がある方はお早めに受診ください。
痛風になる男女の割合は男性が95%と圧倒的で、20歳以降に多くみられます。理由は明らかになっていませんが、女性ホルモンに尿酸を排泄する働きがあるためではないかと考えられています。
そのため女性でも、女性ホルモンが減少する更年期以降には注意が必要です。また、尿酸値は遺伝と環境の両方が関係するので、それらの情報を踏まえたうえで診断する必要があります。
痛風の治療は薬物療法と生活習慣の改善がメインとなります。まずは痛風発作による炎症を抑える治療をし、痛風発作が治まった後は、薬物療法や食事療法などで高尿酸血症に対する治療を行います。
痛風発作と呼ばれる急性関節炎の治療は、炎症や痛みを抑える薬物療法により、通常1~2週間程度で緩和につなげていきます。痛風発作が起きている時に尿酸値を下げる治療を開始すると、痛風が悪化してしまうことがあるため、尿酸値をコントロールする治療は発作が治まった後に行います。
痛風発作緩解後に行う高尿酸血症の治療では、定期的な血液検査とともに薬物療法と生活習慣の改善を継続して行います。薬物療法では、尿酸が体内で生成されるのを抑える尿酸産生抑制薬や、尿酸の排泄を促す尿酸排泄促進薬などを病態に応じて処方します。
生活習慣の改善では、以下の内容がポイントとなります。
痛風は再発することが多い病気ですが、尿酸値を下げる薬物療法と生活習慣の改善を行うことで再発が起こりにくくなります。痛みがなくなると同時に薬をやめ、生活習慣も元に戻って再発してしまうケースも少なくありません。治療は長期的になることもありますが、しっかり継続していくことが大切です。
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